生理作用
コエンザイムQ10(CoQ-10)は、さまざまな作用で老化を防止しているが、その全ての作用がわかっているわけではない。これまでの研究で明らかなのは、コエンザイムQ10(CoQ-10)補酵素Q-10はビタミンEのような抗酸化物質で、脂肪分子をフリーラジカルから保護し、酸化を防ぐということである。また、コエンザイムQ10(CoQ-10)は細胞が正常に機能するために、重要な細胞膜を安定させることに寄与していることもわかっている。そして、コエンザイムQ10(CoQ-10)の最も優れた作用は、細胞内のミトコンドリアに対するものだといわれている。ミトコンドリアは、細胞内のエネルギー生成工場ともいわれている重要なところで、コエンザイムQ10(CoQ-10)はこのミトコンドリアの機能を活性化する作用を持っている。
ミトコンドリアにダメージを与えるフリーラジカルの数が増えるほど老化が進むことを理解すれば、コエンザイムQ10(CoQ-10)やその他の抗酸化物が若さを保つのにいかに必要になるかはよく解かるだろう。 カリフォルニア大学バークレー校の抗酸化物研究の権威、B.アムス博士によると、ミトコンドリアがフリーラジカルのダメージを受けると、細胞へのエネルギー供給は80%も減ってしまうという。こうしたエネルギー不足は、心臓、肝臓、脳の機能を損なうことに深く関わっている。不足していたCoQ-10を大量に補給することで、こうした状況は改善されるのである。
コエンザイムQ10(CoQ-10)は心臓の筋肉細胞に特に多く含まれている。心筋細胞は、心臓が1日何万回を越すポンプ作用を行い、それには非常に多くのエネルギーが必要とされる。コエンザイムQ10(CoQ-10)が欠乏すると、心臓が弱ってくるのも、そのような理由によるわけである。
コエンザイムQ10(CoQ-10)(補酵素Q-10)をよく知ろう
コエンザイムQ10(CoQ-10)をビタミンQともいうが、この抗酸化物質はあまり知られていない。が、老化を予防し、老化によるさまざまな病気、特に心臓病の予防や改善に効果があるとして、新しく発見された抗酸化物質である。体内で生成される自然物質であるが、海産物にも含まれており、サプリメントに合成され、アメリカでは一般の健康食品店で手に入れることが出来る。皮肉なことに、この原材料は殆ど日本からの輸入である。
20歳を過ぎた頃から、体内でのコエンザイムQ10(CoQ-10)の生成は減っていき、中年では深刻な欠乏をもたらすと考えられている。老化した細胞や疾患のある心臓では、コエンザイムQ10(CoQ-10)がかなり欠乏していることからも、50歳を過ぎてから心臓病にかかりやすいのは、コエンザイムQ10(CoQ-10)が減少していくことと関係していることがわかる。コエンザイムQ10(CoQ-10)は、老化に関わる重要な物質なのである。
動脈保護と心臓機能の回復
コエンザイムQ10(CoQ-10)は、動脈硬化のもとになる血中コレステロールの酸化を防ぐのに有効である。ボストン大学の研究者、B.フレイ氏は、動脈硬化の原因となる悪玉LDLコレステロールの酸化を防ぐのには、ビタミンEやベータカロチンといった抗酸化物質が有効だということはよく知られているが、それよりもコエンザイムQ10(CoQ-10)の方が効果的だという。この抗酸化作用の過程でコエンザイムQ10(CoQ-10)は大量に消費されるので、いかにたくさんのコエンザイムQ10(CoQ-10)を保持しているかが動脈を健康に保ち、若々しくいられる鍵となるのである。
高齢で心臓が衰えていく状態で一番多いのが心筋症で、心臓の筋肉が弱まっていく状態なのである。心臓が肥大し、弱まって血液が放出されなくなってくる。これは明らかに心臓病で、心臓移植をしなくてはならない状態をもたらすこともある。テキサス大学生化学研究所のディレクター、K.フォルカース博士は、1957年から研究を始めコエンザイムQ10(CoQ-10)を開拓した博士だが、かれは心臓疾患が増えている最大の理由は、みなが気が付いていないが、コエンザイムQ10(CoQ-10)欠乏が増えているからだと主張する。彼は、心臓病患者の血液中には、健康な人よりコエンザイムQ10(CoQ-10)の量が25%少ないことを発見している。さらに、心臓の筋肉が弱まった心臓疾患を持つ高齢の患者にコエンザイムQ10(CoQ-10)を与えたところ、75%の患者の症状が改善されたという。
心臓病学者のP.ランソン医学博士の研究によると、高血圧患者109人にコエンザイムQ10(CoQ-10)を1日225ミリグラム与えたところ、85%の患者の血圧が下がった。3〜4ヶ月間のコエンザイムQ10(CoQ-10)の摂取で、上の血圧は159から147に下がり、下の血圧は94から85に下がったという。さらに、心臓の機能にも改善が見られた。しかも、この実験を始めた時は、全ての患者が降圧剤を飲んでいたが、コエンザイムQ10(CoQ-10)の摂取後は、51%の患者が降圧剤を減らすことができ、25%の患者は薬をやめて、コエンザイムQ10(CoQ-10)の摂取だけで安定した血圧を保つことができるようになった。心臓病を専門にするP.ランソン医師は、コエンザイムQ10(CoQ-10)の効果はとても素晴らしく、コエンザイムQ10(CoQ-10)なしの医療は考えられないといっている。
免疫機能の向上と脳の保護
コエンザイムQ10(CoQ-10)が老化を防止する作用のひとつに、免疫を向上させる働きがある。例えば、高齢のネズミは、若いネズミに比べて、外敵に対して3分の1しか抗体をつくることができない。しかし、高齢のネズミにコエンザイムQ10(CoQ-10)を与えると、抗体の生成が増えて、若いネズミがつくる抗体の80%をつくることができる。人間にも同じような効果がある。フォルカース博士の研究によると、1日60ミリグラムのコエンザイムQ10(CoQ-10)を摂取した患者の血液中の抗体は顕著に増加しており、こうした増加は1から3ヶ月で見られる。
コエンザイムQ10(CoQ-10)は細胞のミトコンドリアの機能に重要な物質であることからも、アルツハイマーや記憶障害、ボケなど高齢で起こる老化現象として捉えられている脳機能の障害の予防にも効果があると示唆する研究者達もいる。フリーラジカル研究の先端をいくネブラスカ大学のD.ハーマン博士は、脳細胞でフリーラジカルのターゲットとなりダメージを最も受けるのはミトコンドリアであり、ダメージを受けると脳機能が低下していく、という。コエンザイムQ10(CoQ-10)は、そのミトコンドリアの活力を復活させることのできる数少ない抗酸化物のひとつなのである。
若さを保ち長寿のビタミン
カリフォルニア大学ロスアンジェルス校の病理学者、S.ハリス博士の研究によると、コエンザイムQ10(CoQ-10)を与えているネズミは若さをより長く保っているという。また、コエンザイムQ10(CoQ-10)を与えられているネズミは、与えられていないネズミに比べて、歳をとっても、とても活発だという。
コエンザイムQ10(CoQ-10)やその他の老化防止物質を専門とするカリフォルニア工科大学のS.コール医学博士は、コエンザイムQ10(CoQ-10)を与えられているネズミは、見かけがよく、毛づくろいをよくするし、毛並みがいいので、2〜3ヶ月は若く見えるという。興味深いことは、こうしたコエンザイムQ10(CoQ-10)の効果は、高齢になるまで現れないということ。若いうちは、違いが見られないという。
コール博士は、中年期までは全てのネズミは同じように見えるが、高年期になると、突然、差が現れてきて、コエンザイムQ10(CoQ-10)を与えているネズミは、与えていないネズミに比べると、どんどん見た目が良くなっていくという。
また、ハリス博士の研究では、コエンザイムQ10(CoQ-10)を与えられたネズミの30%は、与えられていないネズミに比べて約2ヶ月長生きだという。
コール博士は、「コエンザイムQ10(CoQ-10)を摂り始めたらすぐ元気になると考えてはいけない。コエンザイムQ10(CoQ-10)の摂取は、保険のようなもので、将来への投資なのである。そして、その報酬は高年期に得られる」とコメントしている。
まとめ
50歳を過ぎると、コエンザイムQ10(CoQ-10)は不足がちになるので、老化を防止するためにも摂取をすすめたい。健康であれば、1日30ミリグラムで十分だが、病気がちであれば50〜150ミリグラムの摂取が必要となる。ランソン博士の研究では、心臓病患者に1日120ミリグラムを2回、合計240ミリグラムを摂取することで、80%の患者で心臓機能が最高の状態の時のCoQ-10血中濃度を保つことができたという。コエンザイムQ10(CoQ-10)は、血中で長時間滞留していられる。一度に100ミリグラムのコエンザイムQ10(CoQ-10)を摂った後でも、血液中のコエンザイムQ10(CoQ-10)レベルは最高値に達することができる。だから100〜200ミリグラム摂っても全く問題はないとランソン博士がいっている。
コエンザイムQ10(CoQ-10)は過剰にとっても副作用は見られず、非常に安全だという。しかし、病気のため処方箋を受けている人は、その薬の代わりにコエンザイムQ10(CoQ-10)を摂取することのないようにして欲しい。心臓病などの病気の場合、薬の他にコエンザイムQ10(CoQ-10)を摂取するケースも多いので、主治医に必ず相談の上、摂取した方が良い。
アメリカで売られているほとんどのコエンザイムQ10(CoQ-10)は、日本でつくられたもので、タブレット状のもの、粉をカプセルにしたもの、油性のカプセルのものなどがある。油性のカプセルのものや、かむタイプのタブレットのものは、吸収がいいのでおすすめである。
大切なことは、コエンザイムQ10(CoQ-10)タブレットは、脂肪分と一緒に摂るか、オイル状カプセルでとらないと、吸収されないことを知ってほしい。当然、タブレットタイプのものを水で飲んでも、ほとんど吸収されないということである。
「サプリメント革命」 より
著者 佐藤 富雄
発行所 毎日新聞社